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逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

3.とりあえず.4

 落ち着いて周りを見渡してみると、事務所内はやはり、かなり良い家具が配置されているようだ。
現に私たちが今座っているこの長椅子にしても総革張りの上質なものである。
 
 食事を終えたらまずは倉庫の探索から始めようと意見がまとまった。
 
「えっと、倉庫は三つって言ってましたよね。でも……」
 
 ふたばが持参のマイドリンクを一口ごくりと飲み込んでから話しだした。
 
「廊下沿いに二つの倉庫があって、
それは昨日も今日も確認済みなんですけどぉ……。
三つめの倉庫ってどこなんですかね」
 
 確かにそうだ。
ふたばが預かっている鍵には『壱』『弐』『参』とナンバリングのシールが貼られていて、私たちも一番目と二番目の場所は把握している。
しかし、この『参』の鍵で開くということになる第三倉庫は今のところ目にしていない。
 
「うーん……まあ、とりあえず一番目からやっつけましょう」
 
 ひなこがそう提案し、私たちは壱の倉庫のドアを改めて開いてみることにした。
 
「ふうちゃん、中まで入った?」
 
「いいえ、入り口からざっと見渡しただけですよ。中まではとてもとても……」
 
「だろうねぇ」
 
 やたら三人の会話が弾むのは若干の恐怖心があったからであろう。
例えて言うならお化け屋敷に入る前のテンションに似ているかもしれない。
 
「じゃあ、開けますよ! いいですか!?」
 
 半ばやけくそ気味のふたばが意を決して扉を開けた。
しかし覚悟をしていた割に倉庫内はさほどカビ臭さはなく、
若干の安堵感があった。
 
 扉を開けてまず目に付いたのは四つの大きな作り付けの収納棚で、
『春』『夏』『秋』『冬』と各々の棚に紙が貼り付けられており、
その棚いっぱいに四角やら長方形やらの桐の箱や紙箱が積まれていて
その大半は茶道具が収められているようだった。
 
 私はそのうちの何個かを開けてみたのだが、確かに道具類は季節に応じて分類がなされているようで、
ここまで見ると逢摩氏は思いの外こまめな人物であるように思える。
ここまでは、だが。
 
 しかしその性格はどうも途中で地殻変動を起こしたらしい。
収納しきれなかったその他の箱たちはものの見事にあちこちのスペースに積まれては放置され、
その品のほうが収納済みのそれより圧倒的に多く、
倉庫は単なる物置部屋と化していた。
 
 いや、もっとはっきり言うと部屋自体が大きなゴミ箱になっている、と言ったほうがいいだろう。
漆喰で塗り固められた壁のおかげで湿度は軽減されているとは言うものの、
早急に手当てが必要と思われた。
 
「ここ、整理するんですか?」
 
 ひなことふたばがうんざりした顔で私を見た。
 
「うーん、この部屋は……後にしようか」
 
 そう判断し、次の部屋の第二倉庫の扉を開けるときにはもう度胸が据わっており、
何があっても驚かないと思っていたのだが
第一倉庫より酷かったら正直泣きたい気分だ。
 
 ところが第二倉庫を開いたとき、
私たち三人から漏れた声は悲鳴ではなくむしろ感嘆に近いものであった。
 
 そこは壁一面が本に埋め尽くされており、
きれいに並んだ収納棚も本、本、本でまるで小さな図書館がそこにあるようだ。
 
 古めかしい書物ではあるが、見る人が見たらさぞかし垂涎ものであろう――と
素人目でも思える重厚な表装がなされており、
整然と並んだその状態はむしろ厳かささえ感じられる。
 
 
つづく
 
 

かき氷がおいしい季節ですね~。

 

本日もご覧いただき、ありがとうございます!

 

 

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