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逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

3.とりあえず.8

 方向が決まるとあとは楽だ。各々が自分の持ち場で全力を尽くすだけなのだ。
 
 ひなことふたばは二人でまた細かい作戦を練り出したようで、小気味がよいほどキビキビと動き出していた。
 
「じゃ、私は店の方へ行くね。もう一度ざっくりと配置考えてくる」
 
「了解です!」
 
 二人の声に送られ、なんだか久々に私は身内に火種が入ったのを感じた。
 
 このプロジェクト、絶対モノにしてみせる――と前職のときのように自分自身に火が着いたのを感じた。
 
 さて、店へ向かう前にもう一度先ほどの第三......いや少女の部屋へ立ち寄ることにした。この部屋の家具は使えないだろうか、と思ったからである。
 
 なんでも使っていいと言っていたことだし、なるべく費用は抑えたいのが本心だ。クライアントを満足させるにはコストパフォーマンスは最も重要な部分なのである。
 
 確か部屋に配置されていたクラシカルなデスクやチェスト――あれをイメージ作りの中心に持ってこれば......と、すでに目を付けていた。
 
 そして店の真ん中には何かシンボルになるような大きな物を......と考えているのだがそれを考えるのは後回しにすることにした。周囲には小さめの家具やら本棚やらも配置し、家具の所々にさり気なく商品を置く。
 
 談話コーナーのような場所も作り、そこで思い出とやらを仕入れるのはどうだ。店のイメージカラーは「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」である。
 
 いいねいいね、とイメージはどんどん膨らんでいき、私はご機嫌でドアノブに手をかけたのだが、かちりと開くはずのドアが開かない。
 
 さっきふたばは鍵をかけていないはずだし、あとでまたこの部屋に行くからそのままにしておいて、と頼んだし、それについてはふたばも了解、と言っていたのだ。
 
 なぜ開かないのだ、とガチャガチャとノブを回し、
 
「頼むよ~開いてよ~怪しいもんじゃないからさぁ。さっき開いたでしょ? 失礼しますってば」
 
 と自然に声が出ていた。
 
 すると今までの苦労は何なのだ、と思うほど簡単にドアが開き、却ってつんのめってしまうような形で部屋へなだれ込むこととなった。
 
「なに? ここ。何か合言葉でもあるの?」
 
 独り言を言いながらもう一度部屋の全体を見渡してみるのだが、改めて見るとこの部屋だけは清掃する暇がなかったのか、うっすらと埃が積もり、蜘蛛の巣が所々に掛かっていた。
 
 これもいいなぁ、あ、これも使えそう、と私の目は完全に物色モードへと切り替わっていたのだが、そう思いながらもなぜかこの部屋の物を持ち出そうという思いにはどうしてもなれない。
 
 先ほどまで頭の中に描いていたレイアウトでは、この部屋のチェスト、デスク、電話台、花台と置く場所までイメージできていたと言うのに、今はこの家具に近いもので......と思考がすり替わってきている。この部屋はこのままで、でもイメージはこの部屋のように、と。
 
 いや、ちょっと待て。この家具のようなものを新たに買い付けるとなると一体いくらかかるのだ。コストパフォーマンスはどうした、話にならないではないか。と、もう一人の自分が頭の中で対立をしていたのだが、やはりこの部屋の物を持ち出すのは気が咎めて仕方がないのである。
 
 なにか、この部屋に対して失礼なような気がして仕方がない。神聖なものを冒涜するような、そんな気さえしてしまう。
 
 
つづく
 
 
 

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