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逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

5.塀のむこう.5

「あ、食べてる食べてる! 可愛いねえ」
 
「もう少しあげようか」
 
 などと三人で見守っていると、そのうちの一匹が笹薮の中に走りこみ、
それを合図のようにあとの二、三匹の猫もそれに続く。
そして最後に残った猫が私たちを見てにゃあご、と鳴く。
 
「なに? ごちそうさま? 行儀いいねぇ」
 
 そう笑って見ているとその猫は少し歩いて振り返り、また鳴いた。
 
「え? なんかついてこいって言ってるみたい」
 
「まさかぁ」
 
 戸惑っているとまた振り返るので
 
「ん~わかった、行くよ」
 
 とは言うものの、竹やぶ探索はあまり気が進まないのは確かだった。
 
「あんまり難しいところ行かないでね。私たち、ほら、人間だからね」
 
 そう猫に頼みながら十歩ほど歩くと猫は先に目的地に着いたらしく、
道の真ん中に座り込み、また「にゃあ」と鳴いてみせた。
 
「え? ここ?」
 
「ちょうど例のレンガ塀の後ろのほう?」
 
 驚いた私たちは猫の視線の先を見てもっともっと驚いた。
 
 その家は竹やぶの中に生えていた。
それくらい自然に竹の中に溶け込み、
猫に教えてもらわなければ見落として通り過ぎていたに違いない。
 
 一般の住居ではなさそうに思われるのは、竹垣をイメージしたに違いないドアにネームプレートが掛けられており、
洒落た字体で『塀のむこう』と書いてあったからだ。
しかしその他に看板などは見当たらず、
かと言って一体なんの店なのかは皆目不明だった。
 
 するといきなりドアが開き私たちは思わず飛び上がった。
この界隈は心臓に悪いことが多い。しかも出てきた人を見て更に驚いた。
 
 それは先日私たちにコーヒーをサービスしてくれた逢摩堂の奥方その人ではないか。
 
 思わず息を呑んだ私とひなこだったが
 
「おはようございます」
 
 と、屈託なく声を掛けたのはふたばであり、
私たちもそれに倣った。満面の笑みで応えた奥方は
 
「あら、わざわざいらしてくださったの? 
今ちょうどお持ちしようと思っていましたのに」
 
 そう言ってまたドアの奥に消える。
そして次に現れた時は大きなバスケットを持っていて
 
「じゃあお手伝いしていただこうかしら。木戸を開けてくださいな」
 
 そして奥の方へ再び声を掛ける。
 
「あなたぁ、昨日話してた皆さんがいらしたから、私一人でも大丈夫よ。
コーヒーポット持って来てくださいな」
 
 奥の方からそれに応える声が聞こえ、私たちはますます戸惑ったのだが、
奥から出てきた人物を見てもっと驚くことになった。
 
「ああ、あんたたちが今度入ったって人か」
 
「そう、みいこさん、ひなこさん、それからふたばさん」
 
 とりあえず笑顔で応じたもののこの展開についていけないのは他の二人も同様で、
一瞬次の言葉に詰まったのだが、やはりこんな時に頼りになるのはふたばであり、
 
「ご主人なんですか?」
 
 と、明るい声で聞いている。
 
「ああ、はじめまして。『塀のむこう』のマスターです。
よかったらまたおいで。もっとも夜しかやってないけど」
 
「えっと……何屋さんなんですか?」
 
「食事もできるし酒も飲める」
 
「わあ、そうなんだぁ」
 
 私の脇腹をひなこが軽くつつく。それに対して私も軽く頷いた。
 
つづく
 
 

 

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