逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

8.おおつごもりの客.7

 ようやく酔いが醒めたらしいふたばは目の前で繰り広げられている妙ちくりんな世界に大喜びで、
写真やら動画の撮影に余念がなく、戻ってきたかと思うと
 
「わあ、来年は私たちも出ましょうよぉ」
 
 と、かなり本気の声を出していた。
 
「会長、なんで声を掛けてくださらなかったんですかぁ? 
私たちも協力したかったのに!」
 
「いやいやいやぁ、あんたたちにはもう十分手伝ってもろたわい。
ほれほれ、ネットで評判になっとるじゃろ。
怪しい怪しい狐火の……」
 
 キーキー声の目玉おやじがそこで慌てて口を押さえた。
鬼太郎がごほんごほんと空咳をする。
ははぁ、やっぱりそうか。あなた方が仕掛け人だったわけですね。
 
「いやいやいやぁ、ちょっとだよ、ちょっとばかり、ね。
まあまあまあこんなにうまく行くとはちょっと思っとらんで。
まあそういうことじゃな。いやいやいやぁ」
 
「バラの花はちょっと余計じゃったかのう。すまんすまん。
でもあんたたちに迷惑は掛けんつもりだったし、まあ何ちゅうか……
まあ、一つ乗って欲しいっちゅうか……」
 
「表初恋さくら通り、起死回生の大博打ちゅうか……」
 
 鬼太郎目玉おやじは言い訳に大わらわだ。
 
 その様子を見ていると私たちはなんだか可笑しくなってきた。
よくよく見るとこの祭り、かなり本格的なコスプレで決めている美少女とブカブカの手縫いだろうと思われる被り物の素人まで嬉しそうに手をつなぎ合ったり、
綿飴やらイカ焼きやらを頬張ったり、金魚すくいや射的をしたり、
と何だか異次元の世界が繰り広げられていて見ているだけでも楽しい。
 
 まあ仕方がない、なんといっても同じ町内のよしみだ。
バンパイアとでも言うのか、どうもその類の妖しに勝手に振り分けされたのは事前伺いが欲しかったものの、
目くじらを立てるほどのことでもない。
それどころかひなことふたばは
 
「やだぁ、教えておいてくださったらもっと妖しい人になってみせたのにぃ!」
 
 と、妙な憤慨の仕方をしている。
 
 そのとき、表のほうがざわついた。
 
「見て、あの人たち」
 
「狐だ! 銀狐の一団みたい!」
 
「すごーい!」
 
 とか
 
「かっこいい!」
 
 と言った感嘆の声がこちらまで聞こえてくる。
 
 一陣の空っ風が不意に起こり、土埃が舞い上がって私たちは目をつぶった。
 
 ざわざわという声が急に静まり、目を開けると風は収まっていて雲の隙間から月の光が差した。
 
 その一団を私たちは見逃した。
 
つづく
 
 

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そして来年はiPhone10周年!

 

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