9.唐土の鳥.2
鬼太郎会長が説明によると町内には通り猫が十三匹いて、各々がその実家の看板猫になっている。
その店をめぐって買い物をすると、各々その店の猫の「肉球スタンプ」を押してもらえる。
もちろん猫たちの肉球はあらかじめ機嫌のいい時に原型を押してもらっていて、
それをゴム印にしておいたというから全く手回しがいい。
そしてプレミアとして三万円以上の買い物をした客には「町内猫様絵姿札」が貰えるそうで。
これにはその猫々の木版による浮世絵風絵姿と生肉球も押してあるというありがたい品だそうな。
「で、この札所、最後がほれ、逢摩堂さんというわけで」
鬼太郎は両手をすり合わす。
「いやなに、迷惑はかけん。いや、かからんはずじゃ。いや、かからんと思う――かからんようにする。
協力してもらえんじゃろか。いやいやいやぁ、三が日限定なんじゃ。
追い風が吹いとる。ここでもう一押しなんじゃ、頼む頼む」
と拝まれ、私たちが困惑していると店の外で「おおう!」というどよめきが聞こえてきた。ついで目玉おやじのキーキー声が聞こえる。
「さあさ、皆の衆。長らく秘密にしていてすまんかった。
ここが最後の札所、逢魔時堂じゃ!
ここで幻の札を入手できますぞい!」
慌てて飛び出した私たちが目にしたのは
「初恋さくら通り猫巡り幸せ巡り十四、十五番札所 逢魔時堂」
と墨跡鮮やかに認められた看板だった。
さてそれからは目が回るような忙しさになった。
スタンプ狙いの客たち、そして激レア札狙いの客たちで店内は常にごった返し、
ひなことふたばは以前大処分したガラクタのことを大いに悔しがった。
「なんでも売れたのに!」
というわけである。
しかし数少ない、選び抜いた品は却って多くの人の目に触れることで確実にファン層を掴んだし、
そして以前から拾い集めていた「猫様のヒゲ」を売りだしたところ、これが当たりに当って私たちの知らぬところで末端価格は数十倍に跳ね上がった、ということであった。
もっとも二匹の実家である『塀のむこう』と『黒猫家』の主人夫妻は
「普通の猫生を過ごさせたい」
ということで固辞したらしいが。
つづく
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