9.唐土の鳥.6
古ぼけた指輪をこの店のどこかに隠したというのは本当のことなのだと男は語りだした。
その指輪は宝石の部分がロケットのようになっていて、蓋を開けると小さな写真が収まるようになっているという。
しかしそこに収まっているのは写真ではなく、何かを記したメモが入っているのだという。
そのメモが何なのかは本当に知らないのだと男は言い張った。
しかもその指輪自体しっかり見たことはなく、ただそう説明されただけなのだという。
とりあえず正月に行った田舎の街外れの、変な名前の骨董品屋に隠した。非売品のシールを貼って。
それを探し出してそこで落としたとかなんとか言って返してもらってこい。
場合によってはちょっと脅してもいいから――と。
「仲間の一人が、店がごった返してるときにここに確かに置いてきたって言うんす。
忘れもんとしてたぶん保管っていうんすか? 取ってあるだろうし、あんな古ぼけた指輪、誰も欲しがるやつおらんだろうから多分そのままのはずだって。
どうせチェックなんかもしていないだろうって。
で、オレ、お前行ってこいって言われて――必ず取り戻してこいって。
じゃなきゃ新しいラッパーと交代だって言われて――」
なんだ、その程度のことか。
私たちが顔を見合わせたとき最所が厳しい声で言った。
「なに寝呆けたこと言ってやがるんだてめぇ!
チェックもしないって三人の姐さん方に失礼だろうが!」
「ごっごめんなさい! ごめんなさい!!
でもオレ本当によくわかんないんすよ!
ただそのメモだかに何か大切なことが書かれてるみたいなんす。
なんか、ヤバい取引の場所かなんか……」
「オレたち練習する場所、無くて、空き倉庫無断で使ってたことあって……
で、持ち主に見つかったんす。
どっかのヤバい兄さんたちで、リーダーがそん時ボコボコにされて。
でもそん時に何か向こうの頭みたいなやつが――こいつら使おう――とかなんとか言って。
で、その指輪オレらにどっかへ置いてこいって。
で、六日以内にまた持って来いって。
絶対お前らが持ってるんじゃねぇ、どっか人が来ないような店の棚にでも置いとけって。
物を隠すときは物の中に、だって。それが一番だって。他の奴らが、さすが兄貴、とか言ってました」
つづく
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