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逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

11.鬼も内.8

「いいお茶碗でしょう?」
 
 私はそう言って微笑んだ。
 
「私、大好きなんですよ。
大らかで優しくて……大地のようにゆったりしていて」
 
 夫人の目からまた新たな涙がこぼれ始め、戸惑った。
しかも今度の涙は前とは違う。
大きく目を見開いたまま大粒の涙がほろほろとこぼれている。
 
「今お持ちしますね。それから新しいお茶も」
 
 棚に置いてある黒楽の茶碗を夫人の手にそっと手渡し、奥の暖簾を分ける。
そこには案の定ひなことふたばが心配そうに立っていた。
 
「温かい……そうね、ミルクティをお願い」
 
 二人にそう声を掛け、夫人の座るブースへとまた戻る。
 
 夫人は茶碗を両手でそっと抱きしめているかのように持っていた。
それから私へ視線を移し、
 
「これ、父の作品なの」
 
 そう呟いた。
 
「父が私のために作ってくれた茶碗……」
 
 また夫人の口からその言葉がこぼれたとき、
ふわりと心地の良い香りがするミルクティを運んできたひなこが夫人の前に並べながらそっと口添えをした。
 
「本当に温かい気持ちがこもったお茶碗ですね。
よろしかったら召し上がってください。冷えてきましたから……」
 
 ひなことともに、いつの間に来たのか平蔵が夫人の足元でにゃあんと鳴いた。
 
「あら、申し訳ありません。
平ちゃん、だめよ。奥へ行ってらっしゃい」
 
 私がそう言って平蔵を持ち上げようとしたとき、
茶碗をそっとテーブルに置いた夫人が「おいで」と平蔵を膝に乗せた。
 
「いい子ね。あったかい」
 
 そう言って優しく撫でた。
 
「お前はいいわね。
何もしなくても大事にしてもらえて。
可愛がってもらえて」
 
「そうですね」
 
 私もテーブル越しに平蔵の頭を撫でた。
 
「でも、それは奥様がこの子を大切に扱ってくださるからですよ。
愛しいと思ってくださっているからです」
 
「そのお気持ちが伝わるから、この子も安心していられるのだと思います」
 
「そうかしら……」
 
 
 夫人はなおも平蔵の艶やかな体を優しく撫でる。
――急いではいけない――私は自分にそう言い聞かせた。
この人の言葉として紡ぎ出すこともできなかった思い出が今少しずつ形になり始めているのだ。
 
つづく
 
 

ポケモンGO、ハロウィンイベント以降接続障害が起こっているようですね。

インターネットコンテンツの加熱がすごいですね。

 

 

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