12.白黒.1
早咲きの水仙を摘みに庭に出ていたふたばが、
真一文字に口元を結んで事務所へ走って帰ってきてはタオルをかき集め、
私とひなこに
「柔らかなタオルをなるべくたくさん! ケガしてる猫を運びます!」
と一言告げるとまた飛び出していった。その後を最所と京念が続く。
ひなこはすぐに大鍋にお湯を沸かしはじめ、
私はバスタオルを何枚も重ねてとりあえずのベッドを作った。
程なくして戻ってきたふたばはそっとタオルの上に猫を横たえ、
恐る恐る覗き込んだ私たちは余りのことに言葉を失くした。
タオルの上に横たえられたのはまだ小さな猫である。多分白猫だろう。
多分、と言ったのはほとんど毛色の判別がつかないくらい泥と血に塗れていたせいで、
もっと息を飲んだのは後左足に突き刺さった吹き矢のようなものだった。
「誰がこんなこと……」
思わず出た言葉に「動物以下のものがやらかしたことです」と答えたふたばは黙っててきぱきと最低限の処置を施した。
見事な手際である。
初めのうちこそ必死で抵抗していた子猫は、
そのうちその力も無くなったのかぐったりと横たわっている。
「とりあえずまた病院へ行きます」
ふたばはそう言い、最所が用意した車にバスタオルごとそっと抱きかかえて乗り込んだ。猫が動くたびに新しい血が流れ出し、またもや弱々しくも必死の抵抗と鳴き声があがっている。
「動かないで、お願いだから。必ず助けるから。
ごめん、ごめんね。こんな目に合わせて」
ふたばはそう囁くようにずっと話しかけていた。
その姿を見送り、私たちはまんじりともせず事務所で待機した。
二人が戻ってきたのは二時間以上経ってからで、
「とにかく無事に吹き矢は抜けました。毒矢じゃなくてよかったです。
出血がひどかったのでとりあえずしばらく入院することになりました。
命はなんとか取り留めました――明日落ち着いたら諸検査です」
その報告を聞いてどれだけほっとしたことだろうか。
事務所内の張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ気がした。
つづく
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