夜咄8
さて、続く会食は黒猫家を借り切り、襖を外して大広間で行われる。真っ白な割烹着を持参していた私たちがそれを持って、廊下を移動しようとすると先ほどの見知らぬ客たちが足音に気付いてか、急にわざとらしく咳払いをしてさっと三方に別れた。
なんとなく、ほんの少しだが胸がざわつくのを感じた。なんの理由も根拠もないのだが、晴天にかすかな雨雲らしきものを見つけたような思い、とでも言おうか。
「やな感じ」
ふたばが呟いた。
「うん、やな感じ」
と、ひなこも。
「さあさ、手伝い手伝い」
私はことさら元気よく言った。この思いを振り払うように。
大広間からはざわざわと賑やかな声が聞こえてくる。
「ああ、脱ぎたくないけどこれじゃ働けないなぁ」
「本当に。なんだかもうすでにクタクタですよね」
まったく、昔の女性たちはこの装いで日常生活、家事もこなしていたとは信じがたい。
「こらこら、主役たちが何しとる」
鬼太郎会長が私たちに手招きをする。
「はよこっちゃ来て席についてもらおか」
目玉親父も唱和する。ボスもにこにこ笑いながら「こっちこっち」と大声で呼ぶので、割烹着を持ったまま広間に入り、とりあえず坐ろうとすると
「あなた達は今日はあそこ」
佐月さんが指差した場所は二双の金屏風の前でいわゆる高砂、メインテーブルであった。
「えー!?」
「ちょ、ちょっと、これは?」
三人で同時に大声が出る。
「ほれほれ、四の五の言わずさっさと行った行った」
半ば押し切られる形で私たちはすでにボスが着席しているテーブルへと着いた。
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