玉響
最所とふたばが新婚旅行へ飛び立ってから一週間後、帰国した二人はかのハリー・ポッターグッズを山のように買い込んできたのでしばし私たちはもちろんのこと、通りの皆もそのコスプレを充分に楽しんだ。
猫たちも各々、作中に登場する四つある寮のシンボルカラーというのか、おしゃれなマフラータイプの首輪をもらってご満悦だったし、あの重い告白の後、しばらく体調を崩したボスも元気を取り戻した。
もっとも、元気になった大きな要因は実は咲良さんが夢に出てきてくれたのだと照れくさそうにボスが話していた。
――黙って優しくてを握りしめ、キスをしてくれた――と少年のように恥じらいながら語るボスを、咲良さんの絵の横に立たせ、全員で「ヒューヒュー」と冷やかした。心なしか絵の中の咲良さんも頬を染めたような気がしたのは、恐らく私だけではないだろう。
面子が全員揃ったところで、もう一度おさらいを兼ねてこの問題を分析してみることにする。
幸いなことに脅迫文といってもよいであろう例の文書を送りつけてきた輩は、今のところその後の動きはない。
そしてこの会議は常に咲良さんも交えて――すなわち咲良さんの絵の前で行うことにした。
「間違った方向へ進もうとするなら、咲良がなにかしらのアドバイスをくれると思う」
とボスが主張したし、私達にも異論はなかった。それどころか、いつの間にか私たちすら咲良さんが頷いたり、あるいは首を横に振ったり――といった様子を感じられるようになっていた。
なにより、咲良さんや他の娘さんたちがこの輩たちの動きを歓迎していないのだという確信が私たちの大きな力となった。
「この際、色々なことをもう一度はっきりさせましょう。お互いに持っている情報やら記憶やらをすべて洗い出し、共通認識にすることから始めましょう」
なんだか一段と男ぶりが上がったような気もする最所が口火を切った。
「同感です」
「そうね、その必要があるわね」
最所の提案に、京念とるり子姉さんも頷いた。
「各々、思いついたこと、あるいは違和感を覚えたことの洗い出しから始めましょうか。つまらない誤解に振り回されないように」
最所の提案に全員が頷く。
今まで、そうなのかな、こうなのかな、と納得してきたつもりのことも、もう一度真相を明らかにしていく必要がある。そうしないと彼の、あるいは彼らの目的すら掴めない。
数多の些細なできごとの中に必ずヒントがあるはずなのだ。
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