逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

玉響3

「こんなところでしょうか。他にある?」


 私はそう言って両隣を見る。それを聞いたひなことふたばは口々に、私もそう思ってました、と応じた。


 その様子を見ていた男たちは目で相談し合ったようだった。ボスが頷き、るり子姉さんが口を開いた。


「その内のいくつかは私から説明するわ」

 

 

 そう言うとゆっくり私たちの顔を見回し、少しの間を置いて言葉を続けた。


「簡単に言うと、ここ四、五年――不可解な事件や事故が続いたのね。はじめこそ単なる偶然が重なったもののように思われたその一連の出来事が、内偵を進めていく内にどんどん的が絞られてきたかのようにこの近隣県に頻発してきたの。――そしてどうもこの地方がターゲットなのではないか――と思われてきたのがここ二年ばかり前。すなわち露敏の指輪事件のころね。そして事件や事故は凶暴性こそ低いとはいうものの、狙われる人物や年齢、職業――あるいは業種や時代背景が似通っていたの」


 そこまで話を聞いて、思わずごくりと生唾を飲み込む。まるで自分たちからは遠い世界、まるでテレビドラマのワンシーンを見ているかのような話だったが、るり子姉さんの話は続いた。

 

 

「実はね、私こう見えてもいわゆる『キャリア組』なのよね。本庁の特命ってやつ。――やぁーだ、びっくりしないでよ。ついでに言っちゃうと初めて来た日の変な集団覚えてる? あいつらもそう。同期や後輩連中。まあ――色々あるのよ」
「ああ、それと夜咄の日に来てた目つきの悪い連中――あれもそう。管轄は違うけどね。彼らはいわゆる国際犯のほう。――ガタイいいの、前来てたでしょ? カメラ小僧よ」


 るり子姉さんの説明に私たち三人は椅子からずり落ちそうになった。内容をうまく飲み込めないままでいるが、あの日から違和感を覚えていたことの一つが解消されたことは間違いないらしい。


「まあそういうわけよ。で、何が目的なのか初めは見当がつかなかったし単なる偶然で片付けられるはずだった一連のものが一筋縄ではいかないと結論づけられたのは、バックに某国の有名な窃盗団が関わっていることがわかったの。その上彼らは私たちより早く的を絞ってきているらしいってこともね。――で、私の登場ってわけよ」


「あいつらが狙っているのは逢摩堂……多分あの茶碗に間違いないと思う。敵は実に厄介ね」

 

 

 

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