逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

語り継ぐもの

 その後も話し合いは何度も開かれた。というよりかは、今やほとんど夕食を共にしている我々だったので食後のコーヒータイム、デザートタイムは咲良さんの部屋で、というスタイルが定着したに過ぎないのだが、みんなで車座になってはああだこうだ、と話し合うと時として不安になる心も穏やかになっていく。


 るり子姉さんを中心とするその筋の方々が捜査を進め、磐石の布陣となっている安心感もあってこそのことだが、それ以上に強い連帯感が私たちを強くしている。


 そんな中、私たちは茶碗に秘められた謎解きに全力を尽くしていた。


 咲良さんの一族が脈々と伝えてきた三つ揃いの価値とは一体何なのだろう。その一つ一つでさえ価値がありすぎる物らしいのだが、三つ揃えばどういった奇跡が起こるのかということがわからずにいた。


 形状や使用されている釉薬など、その美術的な検証についてはボスが永年に渡って研究を重ねている。元来古書専門だった逢摩堂が骨董まで手を拡げたのも、その謎を解明するためだったらしい。


 咲良さんも首を傾げるばかりでその「なにか」はわからない様子だった。

 

 

「一体なんなのかなぁ」


 とっくに何度も検索をしているパソコンの画面を穴が空くほど睨みながら、ひなこが冷めきったコーヒーをすする。


「あ゛あぁぁぁぁ」


 分厚い専門書を読みふけっていたふたばが思いっきり背伸びをした。


「気分変えよう! お茶にしましょ! 今日はおいしい練り切りがあるからお抹茶でも点てますかね」


 専門書を閉じ、厨房へ身軽に駆けていった。


 今日はボスも最所と出かけており、京念も多忙らしく顔を出さない。るり子姉さんは本庁で会議ということで昨日から上京しているのでお三時に三人だけというのは久し振りだった。


 ふたばが点ててくれた抹茶の、その茶碗はひなこが焼いたものだ。ここのところ彫金から焼き物まで学んでいるひなこが、はじめに三人お揃いの茶碗を作ってくれたのである。


 私たちはすっかり気に入って、本来の用途以外にもちょっとした汁物を入れたり丼として使用したり、と使用頻度が高い。


 雰囲気は例の雪月華と名付けられている茶碗にも似ているのだが、どこか冷たさを感じさせる件の名品より、もっと温かく、掌に馴染むような気がする。その茶碗をボスが羨ましがり、次は自分と咲良さん用の茶碗も作っておくれと笑っていた。

 

 

 

 

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