逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

2016-10-27から1日間の記事一覧

11.鬼も内.9

「父は窯元の次男坊でした。あなた、ご存知でしょう? ああいう世界では一子相伝――長男が名跡を継ぎます。 たとえ長男より才能があっても次男や三男がその名を継承することはありません。 父はずっと冷や飯食いだった。 でも私は父の作るものが好きだった。 …

11.鬼も内.8

「いいお茶碗でしょう?」 私はそう言って微笑んだ。 「私、大好きなんですよ。 大らかで優しくて……大地のようにゆったりしていて」 夫人の目からまた新たな涙がこぼれ始め、戸惑った。 しかも今度の涙は前とは違う。 大きく目を見開いたまま大粒の涙がほろ…