逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

四月馬鹿.11

「やだぁ、会長ったらかっこいい!」 「すてき! 惚れ惚れしちゃう!」 その場の空気にはいささか場違いな嬌声が上がった。 「さあさあ、こんな場所で野暮は禁物。お入りになって。もっとずずいと」 「こちら、どこの国のお方?」 「はじめましてぇ、渋くて…

四月馬鹿.10

「うーん、この屁理屈は理解不能だ」 飛び上がった猫と茶碗がそれぞれ大人しくなったころ、私とひなこは溜息をついた。気になるのは「経緯はどうでもいい。我が国で作ったものは我が国のものだ」というその不可思議な価値観だ。 それが正しいのであれば件の…

四月馬鹿.9

その空気に水を差すかのように御大尽が一言、 「この茶碗は本来私たちの祖国のもの。返していただきたい」 と言い放ったそうだ。はじめこそ冗談だと皆笑っていたらしい。しかし目が真剣である。 「どういうことですかな? 私はその持ち主から買い取ったので…