逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

夜咄11

「ええ!?」


 この声は私たちから漏れたものだ。そうだったのか――しかし思い返してみると確かに初日の面接時に「なぜひなこ、ふたば、みいこなのか」と尋ねた私に「歴代そうなのだ」と答えがあった気がする。しかし以前のひなこ、ふたば、みいこはどこに消えたというのか。思わず私たちは顔を見合わせた。


「ありゃぁ、みんなダメだったわ」


 やまんばばあさまがモゴモゴと言い出した。


「ちょっとわしらが脅したら尻尾巻いて逃げ出すおなごやら下心ばかりで色目使いよるおなごやら、心の良からぬ輩ばかりじゃった」


「ばあさん驚かせすぎじゃったわ」


「おめに言われとうない」


「なにより咲良さんが気に入らんかったんやろ」


 雪女おばさんがしみじみと言った。


「さあさあ先生、もうその辺でよいじゃろ」


 鬼太郎会長が場を引き締めにかかる。


「で、皆の衆。わしらはようやくこの三人様に出会えたということじゃ」

「本当にめでたいの、逢摩堂。いや、本当におめでとう逢摩さん」


 ボスが立ち上がった。


「と、いうわけじゃ。皆さんこれでよかろうか」


 大広間はいっぱいの拍手で包まれた。


「この三人じゃったら文句のつけようがないわい」


 皆がそう言って頷いた。何だか正直言って未だによくわかっていない。しかし、この日私たちは正式にかの茶碗の持ち主となったようだった。


「そしてもう一つ皆さんに伝えたい事があるんじゃよ」


 ボスは続けた。


「わしはここにおる三人を正式に養女として迎えるつもりじゃ」


「ええ!?」


 私たちも思わず立ち上がる。


「いやいやすまん、あんたらには何も言わんと。しかしどうじゃろう。わしの娘は嫌かの。こんなじじいは気に入らんかの? ――いやいや、すぐ返事を、とは言わん。しかし考えてみてくれんか。だめかの?」


 再び静まり返った大広間――全ての視線が私たちに注がれ、思わず目を瞑った。


 この二年間の出来事が走馬燈のように脳裏をよぎる。色々なことがあった。本当に中身の濃い得難い日々、愛しい日々。今までの私は何をして生きていたのかと思うくらいに、ここ逢摩堂での日々は――生きている、生かされている――という実感があった。


 しかし、こんなことが現実にあって良いものなのか。即答するには余りにも重い話でもある。

 

 

 

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