夜咄12
「ったく、これだから年寄りは困ったもんじゃ」
最長老でもあるやまんばばあさまが声を張り上げた。
「三人を見てみい。どう返事をすればいいもんか困り果てとる。ちったぁデリヘルちゅうもん持っとらんのかのぉ。変わらんのぉ、お前さんは」
「ばあさん、それを言うならデリカシーじゃ」
目玉親父が話をさえぎる。
佐月さんが控えめに――お返事はゆっくり考えさせてあげましょう――と助け舟を出してくれた。
「すぐにお答えは出ないわよね」
そのとき私の隣で突っ立っていたふたばがいきなり号泣しだした。
「私、なりたい! 私ボスの娘になりたい! 私、ボスをお父さんって呼びたい!!」
魂の叫びのようにふたばは泣いた。
「でも私ダメです。ダメなんです。私、その資格ないんです」
崩れ落ちそうなふたばをひなこが支えている。最所が飛んできた。
「ふたちゃん」
ボスがふたばの頭を撫でながら小声で囁いた。
「お前さんの例の親父さんとはとっくに話はつけてあるよ。そのことを心配しとるんなら、何も気にせんでいいんじゃよ」
目を見張ってボスを見上げたふたばに、ボスはもう一度優しく言った。
「もう何も、何者にもお前さんの人生を邪魔されることはないんじゃよ」
ひなこも叫んだ。
「私も! 私もボスをお父さんって呼びたいです! ずっとお側にいたいです!」
二人の様子に大広間は全員もらい泣きだ。黒猫家の主人と女将さんも手放しで泣いている。ボスはすがりついて泣きじゃくるひなことふたばを優しく撫でながら私を申し訳なさそうに見た。
頼むよ、みいこさん、とその表情は語っている。そうだ、難しく考えることなどない。とっくに私たちは家族なのだ。ボスはとっくに私にとってお父さんだった。
「なんちゅーめでたい!!」
「ああ、もう、飲もう飲もう。何もかもこれで大一段落じゃ」
みんなが口々に叫ぶ。
この夜の宴は朝まで続いた。しかし、私がふと気付いたとき、例の三人の姿はすでになかった。
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