12.白黒.2
へなへなと椅子に座り込んだのは、
私たちはもちろん、残った京念とボスも同様だった。
「それにしても……子どものイタズラにしては質が悪い」
ボスが吐き出すように呟き、
「同感です。絶対に許さない」
と、いつも笑顔を絶やさないふたばが氷のように冷たい声で言い放った。
「私、大嫌いです。こんなことをするやつが同じ人間だと思いたくもない」
「見つけたら……あの子と同じ目に合わせてやりたい」
こういう場合、年長者として「まあまあ」と宥めるべきなのかもしれないが、
実は私もひなこも同意見であり、
もっと困ったことにボスや最所、京念も同じ考えで、考えてみればこの犯人はなかなか物騒な連中を敵に回したことになったのだった。
毎日毎夕、病院へ入れ代わり立ち代わり顔を出す私たちは
すっかり待合室の人たちとも顔なじみとなり、それに伴って色々な情報を耳にした。
そんな中で私が思わず耳をそばだてたのは、ふくふくと太った長毛種の猫を抱いたおばさんとその隣で臆病そうなチワワを入れたキャリーを抱いているおばさんの会話である。
「で、えいこちゃんの足はすっかり良くなったの?」
「ん、少し引きずってるけど松葉杖もそろそろ取れそうだって」
「良かったわねえ。じゃあもう皆さん大喜びでしょう?」
「そうそう。一時は二度と歩けないんじゃないかって心配してたから」
「本当に良かったわ。えいこちゃんの病気以来すっかり皆さん元気なくしてらしたし。えいこちゃんは手術したくないって言ってたんでしょう?」
「そうなのよ。年頃の娘だからやっぱり片足を無くすっていうのはねえ……」
「毎日泣いてばかりでねえ」
と、チワワのおばさんは溜息をついた。
「でもね、弟のあっくんがどこかから猫を拾ってきて」
チワワおばさんは太め猫おばさんに言いながら、でっぷり猫をそっと撫でた。
「なんだかそれ以来家族がうまくいってね。
で、えいこちゃんも頑張ってみるって」
「そうそう、この子たちはなんとも空気を柔らかにするものねえ」
「でもね、今度はその猫がちょっと元気を無くしてるみたいなのよぉ。
食べ物受け付けなくなってずっと外に出たがってるんだって。
――いえいえ、発情とは関係ないらしいのよ。
そのうえね、後ろ足をね、ちょっと引きずるようになったらしいの。
まるで身代わりにでもなったみたいで――もちろん病院にも行ってるんだけどねぇ……」
と、そのえいこちゃんの伯母らしい人は溜息をついた。
つづく
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