逢魔時堂

逢魔時(おうまがとき)は昼と夜が移り変わる時刻。人の目が宵闇の暗さに順応する前の状態にある時間帯のことを言うのだそうだ。闇に慣れると人の目は宵闇の暗さに慣れ、暗闇の中でも物の形が区別できるようになる。それは、人の心の闇もまた。

玉響2

 

 ではみいこさんから――と話を振られ、私は話を始めた。


「いくつかわからないことがあります。それはるり子姉さんが以前この店が――たしか色んな筋から狙われている、と言ったこと。あの後の露敏君の指輪事件やら逢魔時堂の都市伝説やらで、このことなのかなと納得はしてたんですけど……なんだかそんな程度――まあそれはそれで大きな出来事ではあったんですけど、これだけのことだったのかなぁって思ってるんです。もっと他に何かあるんじゃないのかって」


 数年前に店にやってきた更科露敏はこの店のどこかに隠されているという指輪を店に探しにきたのだが、その際に「どっかのヤバい兄さんたち」に指示された、と話していた。


 私のその言葉にひなことふたばも深く頷いた。


「たぶん、それは咲良さんの茶碗に関することじゃないのかなぁって」


 その話にボスが――それは――と話そうと身構えたとき、絵の中の咲良さんが軽くボスを制した気配がした。それはまるで――最後まで話させてあげなさい――とでも言うかのように。


「三つ揃って価値がある――それはどういう意味なのでしょうか」
「なぜバラバラに持たせるように、って咲良さんは願ったのかな」


 ひなことふたばがそう続いた。


「そうなんです。このあたりがよくわからない」


 私たちがここのところ三人で話し合っていた内容はこうだ。


「今までも現れていたひなこ、ふたば、みいこはこの茶碗のことやその価値、それから――あの事件のことなんかも知っていたのですか?」


 ひなこがそう話し、そしてもう一つ、と話を続けた。


「初めてここに来たとき、通りはまるで死んでいるかのようでした。みんなは私たちが来たことで通りが蘇ったと喜んでくれていて、それはそれで嬉しいんですけど――じゃあ、実際に何かしたかと聞かれたらなにも特別なことってしてないんですよね。何かを意図して動いたっていう自覚はないんです――私たち、何かしたのかな?」

 

 

「それと……実はずっと気になってるんですけど……」


 ひなこの話の後で思いきって口を開いた。


「あの夜咄《よばなし》の日にいらしてた三人の方は、どういう方々なんですか? 父さんの知り合いだろうとずっと納得しようと思ってたんですけど、なんか引っかかって仕方ないんですよね」


「父さん、あの人たち感じ悪かった」


 ふたばが言葉を被せたあとに、ひなこも頷いて


「なんか……違う世界を持ってるような感じがした」


 と話す。


 今まで気にはしていたのだが、なかなか聞けないままでいたことをようやく聞くことができ、少し心が楽になった気がした。

 

 

 

 

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