Who Killed Cock Robin? 2
「うーん、なんともはや」
ボスがうめいた。
「こりゃまた疲れるもんじゃのう。まだこの後二回もあるのか。いやいや、楽しみなことじゃな」
それを聞いたひなこと私は噴き出した。
「父さん、私たちは――いえ、少なくとも私は当分行きませんから」
「私も――ごめんなさい。多分行きませんからね」
「いやいや、まあ、嬉しいような――寂しいような、じゃの」
「あ、そうだ」
何かを思い出したのか、ひなこが急に立ち上がる。
「お祝い箱の中、一応検めておかなくっちゃ!」
そうだった。途中忙しくなった私たちは、とりあえずお祝いのメッセージやらお祝儀やらを入れてもらうために、箱を設置していたのだ。
きちんと検めて、失礼のないように――最所とふたばが恥をかかぬように、困らぬようにしておかねばならない。
持ち上げてみると箱は思いの外ずっしりと重く、二人がかりでようやく運べるほどだった。開けてみるときちんと熨斗がかかったお祝儀袋やら封筒やら、あとは小銭がジャラジャラと大量に入っているのは賽銭箱と間違えたのだろうか。そういえば宴の最中に二礼二拍手一礼の姿をかなり見かけたような気もする。
「この小銭は後回しにして……とりあえずこちらの方を開けないと」
税理士と刑事にも仕分けに立ち会ってもらう。これ以上の立会人はいないだろう。
しかし、仕分け作業を始めて程なくしたときである。祝儀袋やお祝いのメッセージを書いたカードに紛れて一封の不祝儀袋――すなわち香典用と思しき袋が出てきた。
あまり趣味の良いジョークとは思えない。思わずその袋を凝視していたのだが、横からさっとるり子姉さんの手が出てきて袋をつまみ上げた。
一度舌打ちをして開封すると、黒い台紙に銀色のインクで書かれたメッセージカードが出てきた。
「――なに、これ」
恐る恐るカードをつまみ上げると『Who Killed Cock Robin?』とだけ書かれている。
「フー キルド コックロビン――?」
「駒鳥は誰が殺した?」
るり子姉さんと顔を見合わせる。
「これって……あ、マザー・グースだ」
ひなこがそう言ってパソコンで検索を始めた。
「そうです、マザー・グースの『誰が駒鳥殺したの?』ですね」
――誰が駒鳥殺したの?――それは私と雀が言った――
――その血は誰が受けたのさ――それは私と魚が言った――
この奇妙な歌詞は私も薄っすら覚えている。たしか皆で葬式の段取りを決めているような内容で、相変わらず不思議な世界観だと気にも留めていなかったが。
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