ひいふうみい7
それから一週間経ったが最所と京念は顔を出さない。
はじめのうちこそ体調が悪くて歩けないのじゃないだろうか、もしかしたら餓死寸前になっていないかと気を揉んだのだが、様子を見に行ってくれたるり子姉さんは
「放っておきなさい。ったく、なに考えてんだか。そのうち現れるわよ」
と言うばかりだし、仕事の方は障りなく活動もしているらしいのでとりあえずは安心しておくこととする。
「お? わしは大好きじゃが今夜もおじやかえ?」
「え? あ、はい」
歯切れの悪い返事をしたのはふたばで、
「ごめんなさい、ついついご飯を余らせてしまいまして……」
そうなのだ。大食漢の二人がいないと食事の残り物が多くなってしまう。はじめから少なめに、とここのところ気をつけてはいるのだが「お腹ぺこぺこでーす!」という声がいつ聞こえてもいいように――と思うのは習い性になっているらしい。
そんな折にボスの大好物であるリンゴのピザをバスケットに入れて佐月さんが現れた。
「うまいのぉ、相変わらず。絶品じゃの」
はじめこそピザにリンゴという意外な取り合わせに恐る恐る手を出した私たちも、今はこの美味しさの虜になっており、最所、京念、るり子姉さんもこのピザの大ファンだ。
「今日はライバルがおらんから多めに食えるわい」
ボスが嬉しそうに五枚目の一片に手を伸ばしかけたときは、さすがに私が待ったをかけた。
「そういえば」
佐月さんが笑いながらコーヒーをボスのカップに注ぎながら口を開いた。
「先生方は?」
「それが、最近現れないんですよね」
「一体どうしたんでしょう」
ふたばとひなこが心配そうに言う。その様子に佐月さんが笑いを噛み殺しながら――やっぱり、ですか?――と言ったので、ふたばが
「え、なにかご存知なんですか?」
と勢い込んで尋ねた。
「え? まあ……最所先生のほうは、ね」
それを聞いていたボスはにやりと笑い、佐月さんに目配せをした。
「そろそろ年寄りの出番かの?」
「そうですね。ちょっとそのほうがいいかもしれないですね」
二人はそう言って意味深に笑いあった。
「なんですかぁ?! ったく、いやーな感じ」
ふたばがそう言って膨れている。
「天知る、神知る、猫も知る、かの。げにげに不可思議は人の心じゃということかの」
「わけがわかりません! それを言うなら天知る、神知る、我知る、子知る、ですよ」
「ほほう、相変わらずふたちゃんは詳しいのぉ。ま、我知るが知らんやつばかりでこの世はややっこしくなるんじゃよ。なあ、佐月さん」
それを聞いて佐月さんが吹き出した。
「本当に。見ていてじれったくなりますね」
そう言って笑いながら去っていく佐月さんを見送りながら、私もようやくもしかしたら、とある考えが浮かんだ。
もしかしたら、そういうことか?――ええ? そういうことなのか? スネイプ先生と最所に共通点など一つもないではないか。このあたりの機微は自慢にもならないが全く疎いのだ。
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